食料品の消費税が1%に?飲食店が今から考えておくべき「簡易課税制度」という選択肢

税理士の田辺亮介でございます。
7月も終盤を迎え、酷暑の毎日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

現在、物価高対策の一つとして、

「食料品の消費税を1%に引き下げる」

という議論が続いています。

消費者にとっては家計の負担が軽くなる歓迎すべき政策ですが、税理士として飲食店の経営を支援している立場から見ると、飲食店には思わぬ影響が生じる可能性があります。

その中でも特に注目したいのが、

「簡易課税制度を選択しているかどうか」

という点です。

まず心配なのは「外食離れ」

食料品の税率が1%になれば、スーパーやコンビニで販売されるお弁当やお惣菜などは、これまでよりもさらに安く購入できるようになります。

一方で、店内飲食の税率が現行どおり10%のままであれば、外食との価格差はさらに広がります。

その結果、

「今日はスーパーで買って帰ろう。」

「コンビニで済ませよう。」

という消費者が増え、外食から中食・内食への流れが加速する可能性があります。

飲食店にとっては、まず売上減少のリスクを考えなければなりません。

見落とされがちな「消費税負担の増加」

もう一つ注意したいのが、消費税の計算です。

例えば、店内飲食は10%課税のままで、食材などの食料品だけが1%になったとします。

飲食店は食材を仕入れる際に支払う消費税が大幅に減少します。

その結果、

食材に係る仕入税額控除が大きく減少することになります。

一方、お客様から預かる消費税は10%のままです。

そのため、原則課税を採用している飲食店では、納付する消費税が今より増える可能性があります。

「税率が下がったのに税金が増える。」

一見、不思議に思われるかもしれませんが、消費税の仕組み上、そのようなことは十分起こり得ます。

もちろん、酒類や光熱費、家賃、消耗品など10%課税の支出もあるため、すべての飲食店で同じ結果になるわけではありません。しかし、食材の仕入割合が高い飲食店ほど影響を受ける可能性があります。

そこで重要になるのが「簡易課税制度」

しかし、ここで話は終わりではありません。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの要件を満たす飲食店であれば、簡易課税制度を選択できる可能性があります。

簡易課税では、実際に支払った消費税額ではなく、業種ごとに定められた**「みなし仕入率」**によって仕入税額控除を計算します。

飲食店(第4種事業)の場合、**みなし仕入率は60%**です。

つまり、食材の税率が1%になったとしても、実際の仕入消費税の減少が、そのまま納税額の増加につながるとは限りません。

ここが原則課税との大きな違いです。

簡単なイメージ

例えば、年商4,000万円程度の飲食店で、食材の仕入れが多いケースでは、

原則課税では、食材に係る仕入税額控除が減少することで、納付する消費税が増える可能性があります。

一方、簡易課税では実際の仕入税額ではなく、みなし仕入率で計算するため、納税額への影響が比較的小さくなるケースも考えられます。

もちろん、これはあくまで一例です。

売上構成や経費の内容によって結果は異なるため、すべての飲食店で簡易課税が有利になるわけではありません。

制度改正と同時に「課税方式」の見直しが必要になるかもしれません

もし食料品の消費税率が大きく引き下げられれば、飲食店経営者が考えるべきことは、

  • 売上への影響
  • テイクアウト戦略
  • メニュー価格

だけではありません。

「原則課税のままでよいのか。」

という視点も非常に重要になります。

売上規模や利益率、経費の内容によっては、簡易課税が有利になるケースが増える可能性もあります。

今後、税理士への相談が急増するテーマになるかもしれません

現在のところ、食料品の消費税率引下げはまだ決定した制度ではありません。

しかし、もし実現すれば、

「簡易課税に変更した方が有利なのだろうか。」

という相談が飲食店から数多く寄せられることが予想されます。

ただし、簡易課税は一度選択すると、原則として2年間継続して適用しなければなりません。

そのため、

「周りの飲食店がそうしているから。」

という理由だけで判断すべき制度ではありません。

制度改正の内容が具体化した段階で、自店の売上構成や利益率、経費の割合などを踏まえ、十分なシミュレーションを行うことが大切です。

税理士からひとこと

「食料品の消費税が下がる。」

このニュースだけを見ると、多くの方は「良いことだ」と感じるでしょう。

しかし、飲食店にとっては、

  • 外食需要が減少する可能性
  • 原則課税では納税額が増える可能性
  • 一方で、簡易課税が有利になるケースが増える可能性

というように、経営面と税務面の両方に大きな影響を及ぼすことが考えられます。

飲食店にとって本当に重要なのは、税率そのものではありません。

「自店に最適な課税方式を選択できているか。」

という視点です。

制度改正は、経営環境だけでなく税務戦略を見直す大きな転機にもなります。

特に、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の飲食店にとっては、簡易課税制度が経営を左右する重要な選択肢となる可能性があります。

制度改正の動向を注視しながら、早めに顧問税理士へ相談し、自店に最適な課税方式を検討することをおすすめします。